つれづれ

今年の株式を展望する~「ネット株手帳」著者が寄稿

2024.1.9

正月早々、能登半島地震に羽田日航機衝突事故が相次いだ2024年、1月4日の東証大発会でも恒例の打鐘を取りやめ黙とうでスタートしました。昨年もスタートは悪かったのですが、平均株価は約32%も上昇しました。新NISAなど明るい材料も加わる今年はどうなのか――「ネット株手帳2024」著者の三橋規宏氏(経済・環境ジャーナリスト)から寄稿がありました。

◇辰巳(たつみ)天井

相場格言に「辰巳天井」があります。縁起担ぎが好きな投資家が干支と株価の関連性を検証すると、「辰年と巳年に天井を付ける」割合が高いとのことのようで、縁起の良い年とされています。今年はその縁起の良い辰年ですが、果たして…。

日経平均株価が最高値を付けたのはバブル最盛期の1989年12月の大納会で、終値は3万8915円でした。しかし90年代前半にバブルが弾けると株価は暴落、リーマンショック後の2009年3月にはバブル後最安値、7054円まで下落しました。その後も低迷し続けましたが、日銀の異次元緩和(13年4月)によって上昇基調に転じ、コロナ禍を克服した昨年5月には1990年8月のバブル崩壊後の最高値(3万1086円)を33年ぶりに上回り、11月20日には3万3853円の高値を付けました=「ネット株手帳2024」8ページ「日経平均の推移」参照。

◇史上最高値更新への期待

元旦の日本経済新聞に恒例の「経営者が占う2024年」が掲載されました。主要企業の経営者20人に株価見通しを聞いたところ、半数が「史上最高値(3万8915円)を超える」との回答でした。達成時期については12月を中心に今年後半、9~12月ごろとしています。多くの経営者が今年の相場に強気の予想をしていることが分かります。

ただ、強気の相場見通しが当たるためにはいくつかの幸運が重なる必要があります。その幸運とは大きく三つです。一つはアメリカの株価・景気動向、二つ目は日本の金融政策の正常化の動き、三つ目が海外要因。経済的には特に中国経済と原油価格の動向、さらにロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・ガザ戦闘といった地政学的要因や気候変動に伴う自然災害などです。

◇米国、政策金利引き下げでダウ4万ドル突破に期待

昨年の米株価、特にNYダウは好調でした。12月には史上最高値を7回も更新、月末28日の終値は3万7710ドルと年間ベースで4542ドルも上昇しました。FRB(米連邦準備制度理事会)はインフレ対策として22年から23年にかけて計11回も政策金利を引き上げ、金利水準は5.25~5.50%に達しています。今年はインフレも鈍化し、景気をソフトランディングさせるため、春ごろに政策金利の引き下げに踏み切ると見られています。どの程度引き下げるかは物価や景気動向をみての判断になりますが、このシナリオで進めば、今年はダウが4万ドルを超え、史上最高値を大きく更新すると投資家は期待しています。ダウの史上最高値更新は日経平均上昇の最大の追い風です。

◇超金融緩和是正、金利のある世界へ復帰

植田和男・新日銀総裁の最大の課題は黒田東彦・前総裁時代に実施された量的、質的超金融緩和政策是正への取り組みです。緊急を要するのは質的手段の金利政策です。この分野では大きく分けて二つあります。一つは長短金利操作(YCC=イールドカーブ・コントロール)の修正ないし廃止、もう一つは短期の政策金利マイナス0.1%の廃止です。このうち、YCCの修正については、昨年10月の日銀政策決定会合で長期金利(10年物国債金利)の上限を1%超まで認めるなど修正への瀬踏みが見られます。マイナス金利の是正については、春闘による賃上げを確認し、賃上げをともなう物価上昇2%が見込めるなら、マイナス金利の解除に踏み切るでしょう。春ごろには決断の時期がきそうです。異次元の超金融緩和を卒業し、金利のある世界に戻ることが、経済活動の円滑化に寄与することは言うまでもありません。

◇不気味な海外要因、中国経済の回復に期待

海外要因は何が起こるか分かりません。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエル・ガザ戦闘など今年も目が離せません。深刻な不動産不況に苦しむ中国経済の早期回復、原油価格の安定などが期待されます。海外要因については新聞、テレビ、SNSなどで情報を的確にキャッチし、機敏な対応が求められます。

◇番外編、新NISA対策

最後に番外編として、新NISA(少額投資非課税制度)に触れておきます。

「ネット株手帳2024」7ページの「新NISAを上手に活用しよう」は、新NISAのうち「成長投資枠」を対象に説明しています。旧NISAと比べ、年間240万円、最大保有額1200万円に拡充されました。では、具体的にどのような銘柄を選んだらよいでしょうか。

一般論でいえば、株価が安く、変動率が安定しており、配当金が高い銘柄です。といっても多くの銘柄の中から、選ぶのですから簡単ではありません。この点について、筆者の見解は次の通りですが、あくまで投資は自己責任、参考意見としてご理解ください。

▽かつて政府機関で、現在は民営化しているが政府の影響力か残っている銘柄。例えば郵政3社(日本郵政、ゆうちょ銀、かんぽ生命)、JT、NTTなど

▽配当金(配当率)が高い銘柄。メガバンク、商社、医薬メーカーの一部など

▽最近、新NISA対策として、株式分割し一株当たりの株価を引き下げた銘柄。これまで株価が高過ぎて、余裕資金の少ない個人投資家には手が出なかった銘柄が分割によって3分の1から5分の1に引き下げられました。今年1月1日から分割した銘柄も複数あるほか、今後も分割に踏み切る銘柄が増えそうです。これらの銘柄は総じて、財務内容がしっかりし株価も安定しているところが多いようです。

(2024年1月9日記)

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