つれづれ

原書、スウェーデン語版、日本語版~
三つの『私はカーリ、64歳で生まれた Nowhere‘s child』、中央大多摩キャンパスで展示

2023.6.2

ナチスのおぞましい人種選別の下で生まれながら、愛ある人生を貫いた女性、カーリの自伝『私はカーリ、64歳で生まれた Nowhere‘s child』が、原書(オリジナル版)、スウェーデン語版とともに中央大学多摩キャンパス(東京都八王子市)中央図書館に展示されている。6月15日まで。

展示は「日・EUフレンドシップウィーク」として行われ、今年は上半期のEU議長国であるスウェーデンに焦点を当てた。図書館2階の特設コーナーでは2015年にアイルランドで出版されたオリジナル版(英語版)、16年出版のスウェーデン語版、そして21年発行の日本語版の計3冊がケース内に並べられ、学生たちが興味深げに見入っていた。オリジナル版とスウェーデン語版は日本語版より大きく、表紙のデザインは違っているのに同一の写真が使われているなど “お国柄” も楽しめる。また、会場ではスウェーデンに関する書籍59点も展示され、EUクイズも行われている。

同大はEUから「EU情報センター」、国連からは「国連寄託図書館」の指定を受けて図書館内に「国際機関資料室」を設置、毎年この時期にフレンドシップウィークとしてEUへの理解を深める展示を行っている。EU情報センターは国内では18大学が指定を受け、EUから寄贈された月例報告や統計資料などを保管しており、研究者の閲覧に応じている。ただネットの普及に伴い印刷物の新規寄贈はほぼなくなり、EUデータベースへの検索方法などの相談を受けることが多くなっているという。

「私はカーリ」の背景にあるのは、ナチスの歪んだ人種政策だ。ナチスはホロコーストで多くのユダヤ人を殺りくした一方、アーリア人を選ばれた民族として人口増を図った。その一手段として、ナチス親衛隊員(SS)とドイツ国内や占領地の女性を“かけあわせ”、生まれた子どもを育てるために「レーベンスボルン(命の泉)」という施設を設置した。スウェーデンの孤児院から養父母に引き取られたカーリは人生のさまざまな苦難を乗り越え、64歳で初めて自分がノルウェーの「レーベンスボルン」で生まれたことを知った。そうした半生を移住したアイルランドの学校で講演したことが大きな反響を呼び、ノンフィクションとして出版されたのが同書だ。

 同大多摩キャパスは1978年に開設され、緑の多い広大な敷地で約1万5500人の学生が学んでいる。フレンドシップウィークの展示は学生でない一般の人でも自由に閲覧できる。問い合わせは同大図書館国際機関資料室(メールアドレス:lib-kokusai-grp@g.chuo-u.ac.jp)。