つれづれ
盲導犬繁殖犬って知っていますか?
『盲導犬繁殖犬チッパーさまさまね 定年おやじ奮闘記』をこのほど発刊しました(四六判152ページ、本体1,600円+税、ISBN978-4-907717-35-3)。
筆者の白石裕雄さんは定年を機会に「これまでやれなかったことをやろう」と考え、「子供のころから憧れていた犬を飼うこと」「どうせなら人の役に立つことを」と、盲導犬繁殖犬飼育ボランティアになりました。盲導犬繁殖犬とは盲導犬の母親・父親になる犬です。
「ぬいぐるみを地面に置くと、それが弾けるように走り出しました。(中略)全身で喜びを表し、尻尾を思い切り振って駆け寄ってきます。それがチッパーでした」 (本文より)
血統の多様性のためアメリカから来たゴールデンリトリバーのチッパーは、この時すでに体重20kg(現在38kg)。元気すぎる個性の持ち主でリードを引きちぎり、ネコや野鳥に突進します。ジム通いを欠かさない白石さんも一歩も引かずに何とかコントロールしようと奮闘します。飼いネコのマリーはうろうろするばかり……。
飼育2年目にようやく繁殖の仕事が入り、チッパーと雌犬2頭との間に計17匹の赤ちゃんが生まれました。富士山麓の盲導犬育成施設に最初の雌犬との赤ちゃんに会いに行きました。
「8つの小さな黒い塊がモゾモゾ、ヨタヨタと動き出しました。彼の赤ちゃんたちです。かわいい!」(本文より)
でも、17匹のうち盲導犬になれたのは1匹だけ(子犬のうち適性のある約3割が盲導犬になる)。次の繁殖のお呼びがかからなくなった“落ちこぼれ”チッパーに、白石さんはエリート街道を歩けなかったのはオレと同じ、と限りない親近感を覚えます。
相棒との7年余の豊かな時間……朝夕のジョギング散歩で脚力はアップし腹回りは5cmも減りました。何より夫婦で役割分担して飼育に取り組むことで家庭内も安定、奥さんからは「チッパーがいなければどうなっていたかしら。チッパーさまさまね」と言われていました。そんな順風満帆な暮らしに突然、思いもよらぬ“暴風”が……。