つれづれ

イヌ散歩の途中に……危険な“落とし穴”

2023.9.29

 毎朝のイヌの散歩、いつも近くの屋敷林のあるお宅の前を通るのだが、なにやら垣根に張り紙がされている。「ここに張り紙があるのは初めて、何だろう」と近づくとブーンと強い羽音がした。それには気に留めずに近づくと、白い紙に「ハチが飛んでいますので。お気をつけてください」「追い払ったりすると刺されますので、そっとしておいてください」と書かれていた。『ハチ』は赤い線で囲まれていた。エッ、今度は上方と左側から羽音がブーン、ブーーンと近づいて来る。ハチだ、ハチに襲われている!

 振り払うか、逃げるか。イヤ待てよ、落ち着け! 平静を装って静かに一歩下がると左側からのヤツが顔をかすめ、上からのは後ろに抜けて行った。黄色と黒い飛行体が目の端に残像として残った。さらに2歩離れる、茂みの中で羽音の数は増えたが近づいて来るヤツはいない。
 さらに5,6歩、ようやく安全圏に逃れたと思ったら、ブーンと大きなのが1匹飛んできて「警告したからな! もう巣に近づくなよ」と言って(そう思えた)頭上を一回りした。

 クマやサメなどの野生動物による死亡で一番多いのがハチで、一年間で20人前後が刺されて亡くなっている(最多の1984年は73人)。その中でも特に獰猛で攻撃性が強いのは、オオスズメバチやキイロスズメバチなどだという。9月24日にも大分県九重町で予定されていた「九州センバツ高校駅伝大会」が、前日試走した高校生22人がスズメバチに刺されたことで中止に追い込まれている。スズメバチは7月から10月ごろまでが活動が活発になるが、専門家は異常に暑かった今年は活動期が長引く可能性があると指摘する。歓迎できない“残暑の置き土産”だ。

 それにしてでもだ。巣のすぐ前という張り紙の場所が問題だった、しかも近づかないと読めない。ハチの巣があることに気付いた屋敷林の持ち主は「通行人が刺されると大変だ」との善意から前日午後か夕方に張り紙をして、市役所に駆除を頼んだのだろう。ただ、通りかかった人は「何だろう?」と近寄って読み、あわてて退却したのだろう。一方、巣(女王バチ)を警護しているハチは人が近づくたびに警戒心を高め、どんどん攻撃的になったのではないだろうか?
 遠くからでも分かるように大きな文字で書くか、あるいは少し離れた場所(2カ所)に「ここから5mほど先にスズメバチの巣があります。注意してください」とすれば、誰も怖い思いをしなくて済んだのではないだろうか。散歩した日の夕方に確認すると張り紙はなくなっていたから、日中に巣は撤去されたのだろう。刺された人がいたかどうかは分からない。