つれづれ
弊社刊『ブラック生徒指導』の著者 川原茂雄さんが「子どもの権利条約を学校内に」の思いを込めて、新刊を出版
『ブラック生徒指導』はこちらです。
ご隠居(元校長さん、町内のまとめ役) 八っさん、どうしたんだい。浮かない顔だね。
八っさん(大工さん) それがねご隠居、困った話なんですよ。
ご隠居 パチンコでまた大負けしたのかい? それとも何かい、昔、タバコ屋の姉ちゃんにちょっかい出したのがカミさんにばれたのかい?
八っさん そんなんじゃないんですよ。うちの一番上のさくら、知ってるでしょ。あいつが「大学を辞めたい」「教師になんかなりたくない」って言いだしたんですよ。それで昨夜はうちのカカアと大げんか、さくらは泣き出すし、カカアは怒って食事を作らないんです。
ご隠居 あのさくらちゃんがかね。トンビが鷹を生んだと町内で評判の良い子じゃないか。小っちゃいころから学校の先生になりたいと言って、今は大学で教職課程をとっているんだろう。
八っさん それがね、今の学校は残業が多くて報われないブラック職場じゃないですか。それだけじゃなくてね、あいつは子どもがのびのび育つために働くのが夢だったんだけど、教育実習に行って、子どもの自主性より管理を重視するブラックな生徒指導を押し付けられたらしいんです。二重にブラックな職場でやって行けるのか、自分も子どもに対して“加害者”になりうるのではないか、と悩んでいるんです。あいつが落ち込んでいるのを何とかしてやりたいんだけど…。
ご隠居 確かに、さくらちゃんは真面目だしな。教員のなり手不足が指摘される一方で、いじめや体罰、その隠ぺいを図る学校や教育委員会もよくニュースになっているしな。
そうだ! 『子どもの権利条約と生徒指導』って本が出たばかりなんだけど、この本をさくらちゃんに読んでほしいな。昔の職場の後輩で、生徒指導の問題点を鋭く指摘した『ブラック生徒指導~理不尽から当たり前の指導へ』(海象社刊)著者の川原茂雄さんの新刊なんじゃよ。
八っさん 何ですか子どもの権利条約って? 聞いたことも見たこともないんだけど、食い物じゃないですよね。
ご隠居 どうもお前さんは食い意地はってるね。子どもの権利条約は1989年の国連総会で採択され、日本は94年に批准したんじゃよ。▽子どもの権利は大人が与えるものではなく、最初から子供が持っている▽大人は子どもの生命・生存・発達の権利を保証しなければならない▽子どもたちが権利行使の主体として成長していくために、国や大人側にその条件を整える責任と義務があるーーことなどが明記されているんじゃ。
八っさん 難しいことは分からないんですがね、その子どもの何とかがどうして今ごろ問題になっているんですか。
ご隠居 子どもの権利条約批准から30年近くたった昨年、文部科学省の生徒指導提要に初めて権利条約のことが記載されたんだよ。12年ぶりに改訂された指導提要のわずか1ページ半の記述にすぎないけれど、今まで学校の門前にとどめられていた権利条約が、校内に入っていけるチャンスとなるかもしれないんだ。4月に子ども基本法が施行され、こども家庭庁が発足したばかりだし、子どもを取り巻く環境が良くなればワシも喜ばしい。
八っさん 親バカかもしれんけど、さくらが笑顔を取り戻して、教師になる夢を追いかけてほしい。ところで川原さんってどんな人なんですか。
ご隠居 北海道内の高校で36年間教師として生徒指導に向き合い、札幌学院大学人間科学科教授(教育学)になってからもその経験を生かして、教職を目指す学生たちを教え生徒指導のあり方を共に考えている人じゃ。川原さんは「理不尽な生徒指導がいまだに横行している学校現場で、子どもの権利条約の理念や精神を、生徒指導にどのように生かしていくべきか、を考えて書いた。教師や親、教育関係者らに読んでほしい」と言っとるよ。
こちらを紹介した書籍が出版されました。
『子どもの権利条約と生徒指導』は明石書店刊、A5判238ページ、定価2100円。