つれづれ

エネルギーを考える1

2021.10.25

 今年、ブックレット「エネルギー使いの主人公になる」シリーズを発刊しました。こちらでは、エネルギーの使い方や創エネルギーについて考えていきます。さて、こちら「つれづれ」ではエネルギーや資源循環についての全国のトピックを紹介します。

 まず、ご紹介するのは福岡県・みやま市。ゼロ・ウエイスト宣言をしてごみゼロを目指すだけでなく、今年(2021年)8月にはゼロカーボンシティを宣言しました。福岡県南部に位置する同市は三池郡高田町と山門郡瀬高町、山川町が07年に合併して誕生。二つの郡の名前からみやま市と名付けられ、約3万6000人が暮らします。有明海に流れ込む一級河川の矢部川河口域に市街地が広がり、南は熊本県に接している。市域の40%は耕地が占め、米作のほかセロリ、イチゴ、高菜などが栽培される。特にセロリの生産量は西日本一を誇り、高菜や山川みかんも有名です。高菜は漬物にするだけでなく、サンドイッチに挟んだりして子どもたちの好きな食材になっています。

 同市が、ごみゼロを目指す「資源循環のまち宣言(ゼロ・ウエイスト宣言)」を市議会で決議したのは20年9月。ゼロ・ウエイスト宣言した自治体は徳島県上勝町(2003年)などに続き国内5例目ですが、生ごみや浄化槽汚泥などをメタン発酵させてできた液体肥料(液肥)を市民に広く供給、循環型農業を拡大しようとしていることで全国的な注目を集めています。

市営のバイオマスセンター「ルフラン」

 みやま市内を車で走っていると、ときどき、薄い青緑色の大きなプラスチック製の桶が軒下に置かれているのが見えます。側面にはみやま市のキャラクター「くすっぴー(市の木クスノキの妖精)」と「生ごみ専用」とが書かれたこの桶は、週2回、市内各地の指定場所に設置され市民の生ごみを回収。回収された生ごみは、市営のバイオマスセンター「ルフラン」へ運びこまれていきます。2018年12月から収集した生ゴミやし尿などから液体肥料(液肥)とバイオ燃料を生産しているのです。ここで作られた液肥は、依頼に応じて市内の田畑へ散布される(有料)ほか、自由にもらうことができるタンクが敷地内ほか、各校区に設置されています。バイオ燃料(メタンガス)は発電に使われ、施設の電気や温水を賄っています。

 

 持続可能な地域づくりは資源循環にとどまらず、教育でも取り組まれています。ゼロ・ウエイストを実現するための基本はゴミの分別です。行政が施設や仕組みをつくるだけでは成立できません。住民によるゴミの分別を浸透・継続するために、生ゴミにそれ以外のものが混じっていると町単位で注意され、よい出し方をした町は表彰するといった仕組みもあります。また、小学校では5年生が2時間かけて、生ゴミを分別する意味を学んでいます。これは家庭ゴミ削減にもつながるだけではなく、将来にもつながる活動です。

 将来への時間軸をどのくらいで考えて取り組むのか。数十年先まで考えることがヒントになりそうです。