つれづれ
トランプ関税で4万円台乗せ微妙か――2025年後半の株価展望
早いものでもう6月に。2025年前半を振り返えると、米トランプ大統領の高関税政策が主要国の経済活動の足かせになり、世界経済全体の成長率低下を招いています。では、後半の経済見通しと日本の株価はどうなるのか――『ネット株手帳 2025』の著者、三橋規宏氏(日本経済新聞社元論説副主幹)に見通しを聞きました。
▽トランプ関税で、世界成長率減速へ
IMF(国際通貨基金)は4月下旬、2025年世界の成長率見通しを、前回(1月)から0.5ポイント下げて2.8%に下方修正しました。高関税政策の影響によるもので、地域別でも震源地の米国が0.9ポイント、ユーロ圏0.2ポイント、日本0.5ポイント、中国0.6ポイントなどすべての地域を下方修正しました。さらにIMFは短期的にも、長期的にも悪化する可能性が大きいと悲観的に見ています。
足元の経済成長率も低迷しています。今年1~3月期の実質経済成長率は米国と日本がマイナス成長、ドイツやフランスも0%台にとどまりました。中国も不動産不況の長期化が加わり、目標の5%を割り込み4.9%でした。米国では関税引き上げ前の駆け込み輸入の拡大がマイナス成長の主因になっています。
▽株安、通貨安、債券安のトリプル安
トランプ大統領は4月初め、全世界を対象に相互関税一律10%に加え、国ごとの「上乗せ税率」を相次ぎ実施しました。日本に計24%、EU(欧州連合)には計20%、中国にはすでにかけた20%と合わせて54%などです。戦後80年、米主導で進めてきたグローバルな自由貿易体制は崩れようとしています。しかし、高い関税の壁で米経済を囲みこむ「自国優先主義」のトランプ政策は、「株安、ドル安、国債安」のトリプル安を引き起こし、米経済に打撃を与え始めています。米最大の格付け会社ムーディーズは5月中旬、米国債の信用格付けを最上位の「トリプルA相当」からワンランク引き下げ、「ダブルAプラス相当」に引き下げました。これで米国の主要な格付け会社すべてで最上位から転落したことになります。
関税の他にも荒っぽさが目立ちます。反ユダヤ主義的活動に対する取り締まりが不十分だとして名門のハーバード大学などへの助成金打ち切りなど大学への攻撃を強めています。これを嫌って、他国の大学へ転出する教授、研究者が増えており、長期的視点でみると、米国科学技術の発展に大きな障害になりかねません。
▽年末の東証株価、4万円台乗せは微妙
今年後半の日本の株価はどうなるでしょうか。トランプ高関税政策は、日米中央銀行の政策金利にも影響を与えています。米FRB(連邦準備制度理事会)は、高関税がもたらすインフレ懸念から政策金利の引き下げを据え置いています。日銀も高関税が日本経済に与える影響を見極めるため、政策金利(無担保コール翌日物金利)を0.5%に据え置いたままです。米国の利下げ、日本の利上げによる金融政策の正常化は秋以降に持ち越されそうです。
日本の場合は、大手企業の賃上げ率が2年連続で5%を超えました。東京証券取引所による上場企業の財務体質改善指導の効果も着実に進んでいます。さらにトランプの高関税政策については国別協議による緩和も期待されています。このため、日経平均は9月頃まではボックス相場の3万7000~8000円台で推移、10月以降年末にかけては3万8000~9000円台円台で推移すると見られます。年初に期待された4万円の大台乗せは微妙といえそうです。
◆『ネット株手帳 2025』配当金記入欄への対応◆
『ネット株手帳 2025』配当金記入欄(72、73ページ)にミスがありました。ご指摘を受けて、昨年12月11日以降ご購入の方には該当ページを修正した2版をお届けしています。
それ以前にご購入の方は弊社ホームページの「お問い合わせ」に、「お問い合わせの種類」を「出版物について」とし、本文に「ネット株手帳送付」と入れ、ご住所・お名前を記入してお送りください。修正したもの(2版)を郵送します。または、本文に「差し替え」と入れて送信いただけましたら、差し替えの2ページ分のPDFをメールにてお送りします。

『ネット株手帳 2025』のご購入はこちら(amazon)へ