「環境エネルギー政策研究所(ISEP)」といっても、あまりなじみのない方が多いかも知れないが、LINK NEWS6でお伝えした市民風車の立ち上げに一役買ったNPOといえば、たいていの方にわかっていただけることだろう。このNPOの代表は、小社刊「ひとりから始まる。2」にも収載されている飯田哲也氏だ。本書から、冒頭の部分を引用してみよう。
「現在私には、三つの「本職」があります。環境NGOという精神的本業(環境エネルギー政策研究所々長)、企業社会との接点(日本総合研究所主任研究員)、姿勢としての科学者です。
私は一九五九(昭和三四)年に自然豊かな山口の山村に生まれ、そこで少年時代を過ごしました。野山をわが庭のように駆けめぐり、遊び疲れて山のなかで朝まで眠り込んだこともありました。私のセンスオブワンダーは、まさしくこの時代にかたちづくられたものです。そしてまた、ダム建設によってかつて遊び回った山の集落がある日こつ然と湖底に沈んでしまったという大規模開発の記憶や、同級生や村人がいつの間にかまちへ引っ越していき村の人口が減っていくという過疎化も、身をもって経験しました。 長じて、私は京都大学へ進学し原子力工学を学び、原子力産業のための学問と自分自身のなかのエコマインドとの間に齟齬をきたしながらも、原子力工学者として鉄鋼メーカーに就職しました。そこで見た「原子力村」社会はあまりにも強権的な管理社会で、矛盾を感じる毎日を送っていました。エコロジストの自分と、職場では工学的合理主義者として振る舞う自分のダブルスタンダードに葛藤した私は、行動と現実を自分の思いに近づけるべく職場を去り、心機一転して北欧のエネルギーと暮らしの現場を歩くことになったのです。」(「ひとりから始まる。2」194ページより引用)
氏は今、三つの「本職」の経歴をフルに生かして、日本のエネルギー政策の提言にまさに八面六臂の活躍をされている。毎日新聞には「NPO発」というコラムを連載され、第8回目(11/15掲載分)には、「現代の戦艦大和」と題された次のような一文をものされているので部分引用してみよう。
「原子力委員会の原子力開発利用長期計画策定会議が使用済み核燃料の「再処理堅持」の方針で中間とりまとめをした。5兆円の国民負担となる新税を導入し、六ケ所再処理工場の運転開始へとなだれ込む勢いである。
(中略)
原子力委の選択は、二重の意味で戦艦大和の歴史と重なる。第一に、技術や環境が大きく変わった現実を見ずに、大艦巨砲主義にしがみつき、大和建造という、間違った技術選択をしたことである。第二に、敗戦が決定的な1945年春に沖縄に向けて出航した戦艦大和の状況に現在は酷似している。 」
原子力先進国は高速増殖炉の開発を放棄し、いまや開かれた電力市場の下で多様な分散型エネルギーと自然エネルギー全盛の時代へ向かっている趨勢のなかで、日本はきわだって時代に逆行するかたちで「巨額の国民負担と環境リスク」を背負いながら、無用なプルトニウムを生み出し誰もが不必要と思っている六ケ所再処理工場の運転に突き進む。そして、その政策転換にだれも責任をとらない、と氏は指摘する。
さらに、環境エネルギー政策研究所(ISEP)メールマガジン 「Sustainable Energy and Environmental News (SEEN)」 - No. 11(2004年12月1日)では、「風発」というコラムのなかで「法治、人治、電治」と題して次のように述べる。
「(前略)法が機能せず、闇の支配者を含む権力者による非公式の差配でものごとが決まる。法の下の平等も正義も紙に書かれただけのタテマエに過ぎず、法治国家ならぬまさに(泥棒)人治国家となっているのである。
エネルギー問題も、まったく同じ構造だ。こちらは、電力会社を中心とする既得権益の「歪んだフィクション」に沿って、政治も行政もメディアの論も含めてものごとが進められるから、「電治国家」というべきか。論理性も合理性も欠落した、その「歪んだフィクション」に基づいて現実を変えようとするから、理解しがたい理不尽がまかり通る。
最近のトピックスで言えば、まず核燃料サイクルがある。原子力委員会は、11月12日の会合で、六ヶ所再処理工場の差し迫った危機に背を向け、ありもしない(あるいは全ての原発に共通の)「原発停止コスト」(使用済み燃料がプールで溢れかえり、停止せざるを得ない原発に対する代替電源費用)を論拠にするなどして、核燃料サイクル堅持で押し切った。これは、希代の詭弁といえよう。近藤駿介原子力委員長は、恥を知るべきだ。(後略)」
一国の命運(否、いまや地球の命運)を左右しかねないエネルギー政策の決定過程において、官僚の言いなりになる御用学者はいても、「希代の詭弁」がまかりとおっているなどということをきちんと指摘してくれる科学者はいない。前掲の「ひとりから始まる。2」の中で氏は、「問題は、政官民(この「民」は民間企業の民でしかない)の「旧い政策コミュニティ」の中心にある「官僚政治」にあり、官僚政治に対するガバナンス(統治)が今後の課題と言えます。」と述べているが、エネルギー政策に環境NPOなどの「民」の意見をきちんと反映させるしくみをつくり、「日本のエネルギー政策に、民主主義を確立する、リアルな戦略が急務だ」(前掲「法治、人治、電治」)。
以下もまた、メールマガジンからの全文引用である。
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