9月20日、22日の両日、有限会社自然エネルギーファンドとNPOグリーンエネルギー青森、NPO北海道グリーンファンド、NPO市民風車の会 あきたが主催した「白神エコツーリズムと市民風車の集い」に参加した。世界遺産白神山地をはさんで北側の青森県鯵ヶ沢町に「グリーンエネルギー青森」が建てた「市民風車わんず」があり、南側の秋田県天王町には「市民風車の会あきた」が建てた「市民風車天風丸」があるのだ。
自然エネルギーが取り持つこのエコツアーには、二つの市民風車以外にも白神山地や三内丸山遺跡といった見所があった。とりわけ、三内丸山遺跡の見学が含まれた一泊二日コース(秋田側へ行く二泊三日コースと翌日帰る一泊二日コースがある)には、記者の体に宿る縄文のDNAが一も二もなく行ってみたいと反応するほどの魅力だった。
初めて見る市民風車、白神山地(実際はミニ白神山地。本当の白神山地はここから20キロ南にあるが、白神山地の山系に抱かれ、官地民林のブナ原生林が見られる)、三内丸山遺跡には心底感動した。風車といい、白神山地といい、三内丸山遺跡といい、まっすぐ延びたブナ林を歩いたときのようなすがすがしさを感じたのはなぜか? 自然のエネルギーを利用した力強い風車、自然のパワーを発散する白神山地、そして自然と共生して循環型の共同体で生きていた縄文人。キーワードは、自然=きなりであった。それにしても市民風車には正直しびれた、一目惚れであった。
「市民風車わんず」を立ち上げた「NPOグリーンエネルギー青森」の事務局長・三上亨さんは、終始にこやかだった。そのわけがわかるような気がした。それは風車はだれの手を煩わすこともなく、風が吹きさえすれば自然の力で四六時中くるくる回り、ただひたすら“稼いでいる”のだから。こんなボロイ商売どこにありまっか。核燃料のようにゴミになってからでも、半永久的に人畜に害を及ぼすエネルギーではなく、自然の贈り物であるグリーンエネルギーで稼いでいるのだから、後顧の憂いなどきれいさっぱりとないのだ。
一口10万円で出資した人には2、3年後には配当金が出るとのこと、それも地域通貨で出して、それで地域の特産品を買ってもらうことを三上さんは今、構想中だ。市民風車がつくりだすエネルギーは地産地消と言う考えに近く、地域の循環型社会のために使われればロスもなく最高だ。それに地域が潤わなければ、食も農も大自然も保たれないのだ。むろん、市民風車が地球環境のためにもなることは言うまでもない。だから、これから先の世代は、自然エネルギーで左団扇ならぬ、左手に風力発電、右手に太陽発電といきたいものだ。
さて、風力発電の風車を初めて間近に見た。発電所名は「あおもり市民風車発電所」という。この風車、頭で考えていた風車よりはるかにでかい! タワーの高さが65メートル、三枚翼で、翼(ブレード)一枚の長さが35メートル。地上から翼のてっぺんまで勘定に入れると100メートルである。ちょうど32階建てのビルほどの高さである。ちなみに天井までの高さが61.9メートルある東京ドームに入れると、タワーの上部と翼部分が空に突き出てしまう。もののスケール感は、実物を見ないとわからないものである。いくら写真やテレビで画像を見ても、実際の大きさは体験してみないとわからないものだ。
というわけで、目の前の日本海に向かって三枚の羽が休みなく回っている。風速5〜6メートルぐらいとのことだが、パワフルにぐいぐい音もなく回る。むろん、耳をそばだてれば、かすかに音がするがほとんど気にならない。最大発電量は1500キロワット、ドイツのTACKE社製である。予想される年間の平均発電量は、370万キロワット/年で、1日当たりに換算すれば約1万キロワットの発電量だそうだ。一家庭が一日平均9キロワットの電力を消費するとすれば、一日当たり約1100軒分の電力を発電していることになる。これは、すごいことではないだろうか。風という無尽蔵な自然のエネルギーを使って電気をつくり、既存の電力会社との間で11.5円/キロワットの固定価格で17年間、全量買い取り契約も済んでいる。あとは「回れ回れ、風車よ回れ!」ではないか。
「市民風車わんず」は、一基当たりの総事業費は約3億8000万円で、そのうちNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から1/2の補助が出、残りは市民から一口10万円の出資を募って完成、今年(2003)3月から営業運転を開始した。「市民風車」という名前が付いている所以である。あるツアーの同行者は、風車のタワー壁に出資者の名前が記されるので「墓石」がわりに一口出資したといっていたほど、これからも人気の出そうな風車である。
市民風車は、市民の出資によって風車を建設し、発電した電気は売電して、その収益を出資者に還元する風力発電事業であるが、2001年9月オホーツク海に面した北海道・浜頓別町に初の「市民風車はまかぜ」が建設された。2例目がこの青森県鯵ヶ沢町の「市民風車わんず」で、3例目が秋田県の天王町の「市民風車天風丸」である。初の「市民風車はまかぜ」を立ち上げたのは、「北海道グリーンファンド」と「環境エネルギー政策研究所」(所長・飯田哲也)の二つのNPOである。
そして、この仕組みで市民風車を作っていくために設立された有限会社が「自然エネルギー市民ファンド」で、代表取締役の鈴木亨さんは飯田哲也さんとともに第一号の市民風車を実現させた一人である。有限会社「自然エネルギー市民ファンド」と組んで地元と全国からファンドを募り建設された「市民風車わんず」と「市民風車天風丸」は、それぞれ「NPOグリーンエネルギー青森」と「北海道グリーンファンド」、「NPO市民風車の会あきた」が担っている。冒頭に記した「白神エコツーリズムと市民風車の集い」の主催者が4団体になったのは、そんな次第だからである。
それにしても、市民風車という新しい動きが地方、それも北海道から起こってきたことは、なんとも痛快な話である。市民風車はまちがいなく、道州制を視野に入れた地方分権の動きとともにあたらしい国づくりの象徴になることだろう、楽しみだ。
「自然エネルギー市民ファンド」 http://www.greenfund.jp/index.html
「北海道グリーンファンド」 http://www.infosnow.ne.jp/~h-green/
「NPOグリーンエネルギー青森」 http://www.ge-aomori.or.jp
「NPO市民風車の会あきた」 http://www.wenet-akita.jp/
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